2013年12月27日金曜日

ハリウッドスターも、「腹が減っては戦ができぬ」




最近ボストンの街中で時々電柱に貼ってある、この黄色いプラカード。
矢印に沿って歩いて行くと、ジェニファー・ローレンスやブラッドリー・クーパーのような有名なハリウッドスターに会えてしまう可能性がある。
 
特に Catering (ケータリング) と書いてあるものにはご注目。
「最近、この業界に入って知った。これからは、このポスターを見たら絶対後を辿って、ただ飯にありつくことにした!」と冗談を飛ばすスティーブ・キャタラーノ氏。
 
キャタラーノ氏はボストン郊外で永年レストランやドーナッツ店を経営してきた実業家だが、マサチューセッツ州がロケ地として人気を集めていることに目をつけ、数か月前に映画業界を専門とするケータリングのビジネスに進出した。
 
ロケ地と言えば、黄色いプラカード。エクストラや舞台裏スタッフが集合地点から撮影現場や器具を収納してあるトレーラー等との間を迷わずに往復できるように貼られるものだ。時間節約のため、撮影では朝食・昼食、時には夕食まで出る。休憩時間になると、俳優から照明・音声担当者までいろいろな人がケータリングと書いてあるサインを辿って仮設食堂になだれ込んでくる。何百人もエクストラを使うような撮影では、食堂がごった返しになるそうだ。 


 
ケータリングというと出前専門というイメージが強いが、ロケの賄いは熱い出来立てのものを要求されるので、調理は殆ど現地でとなる。スタッフは朝3時起き。日が昇る前にフードトラックや冷凍庫車など数車を引き連れてロケ地に乗り込み、流れ作業がやりやすいように配置を工夫して駐車する。ビルの一角にテーブルを並べ、テーブルクロスやカーテンをかけて本物の食堂に見えるように設定。トラックの中で段取りに沿って、時間と争いながらの調理が始まる。


 
キャタラーノ氏の会社で働くシェフのモーリチオ・バーベーゾ氏は、映画業界ご用達ケータリングの道15年というベテラン。こういったケータリング会社は数少なく、一度プロダクション会社に気に入られると全国ロケ巡りとなることも珍しくない。バーベーゾ氏はこれまで数多くの有名な俳優・女優のために調理してきたという。
 
「サンドラ・ブロックはチキン好き。ジュリア・ロバーツは食が細くて、サラダを良く食べる。ジョージ・クルーニーはステーキ派。」とのことだ。
 
最近、HBOテレビ局のボストン・ロケでキャタラーノ氏のケータリング会社が賄っているところを取材させてもらった時、数知れないドレッシングやソースが所せましとテーブルの上に並べてあった。これは、食べる人全員を満足させるための鍵だそうだ。


 
撮影は数か月続くことがあり、同じケータリング会社の料理を毎日食べ続けることになるので、シェフはあきがこない様にメニューから食堂の装飾まで変えて楽しんでもらえる工夫をする。芸能人は一般的にはおおらかで親切。味の煩い人には会ったことがないという。彼らが一番拘るのは、健康的な食材を使う事。食べ物アレルギーに適応したメニュー作りも大切だという。西海岸を拠点として働く人が多く、環境問題に関する意識も高いので、出来るだけ地元栽培の材料を使い、リサイクリングにも心がけているそうだ。 


 
最近、税金優遇政策で映画業界を惹きつけようとしているマサチューセッツ州。キャタラーノ氏と彼のビジネスパートナーであるクリス・サージェント氏は、他の映画界ケータリング会社と違って州外には旅をせず、マサチューセッツで撮られるプロダクションだけを目当てに仕事をしていくつもりだそうだ。HBOテレビ局からは、既にマサチューセッツで撮影する時には必ず彼らの会社を使うという契約をもらったと言っている。
 
ボストン近郊では今年すでにジェニファー・ローレンスやヴィンス・ヴォーンがロケで来ていた。この先映画界でのボストン人気が更に上がれば、こういった仮食堂でジュリア・ロバーツやジョージ・クルーニーのような大御所スターが食事をする光景が見られる日がやってくるかも知れない。



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