2014年1月7日火曜日

アメリカ流の太陽光発電奨励策。でも、やっぱりバブルはつきもの。



日本で「太陽光バブル」が起きているらしい。
 
日経新聞2013年12月23日(水)掲載の記事によると、電力会社が政府の再生可能エネルギーの普及促進策のもと太陽光電力を買い取る固定価格は1kwh あたり値段は40円。一般家庭が電力会社に払う値段の約2倍だ。このため、パネル設置や土地購入へ投資しても儲かる。それで、太陽光利権の転売や、パネル設置に向いた土地の値段暴騰が起きるという訳だ。
 
これは、ヨーロッパで実験済みの太陽光発電促進策。やはりバブルが起きて、途中からうまく行かなくなったらしい。その二の舞を避けようと、アメリカはヨーロッパや日本とは異なった太陽光発電推進策をとってきた。しかし、それはそれでの問題がいろいろと持ち上がっている。
 
アメリカの推進策はクレジット制度。詳細は州によって異なるが、骨組はどこも似ている。(奨励策をとっていない州もある。)
 
クレジットは、一般市場で売れる債権や株のようなもの。正式には、太陽光熱再生可能エネルギークレジット (Solar Renewable Energy Credit 、または、SREC) という。マサチューセッツ州を例にとると、発電量が1,000kwh に達する度に州政府がパネルの所有者にSREC をひとつ発行する。
 
一方、州は電力会社にある一定の割合の電力を太陽光熱で賄うことを義務付けている。電力会社は自らの力だけでその割合を満たすのは困難だが、足りない分はSREC を買って補うことが許されている。
そこで、SREC を受け取ったパネル所有者が、それを必要とする電力会社に一般市場を通して売るわけだ。需要と供給の割合によって、SREC の値段も上がったり下がったり。うまく売ると高い収益になる。
 
また、州の仲介売買も定期的にある。州が売買を斡旋する場合には、最低価格が固定されている。買い手も売り手も各自なりの相場の読みがあり、一般市場で取引するか州斡旋を待つか決めるわけだ。
マサチューセッツ州がSREC を導入したのは、2010年。希少品のSREC は州仲介市場の最低価格が600ドルに設置されていた。パネル設置数が増えれば、出回っているクレジットの数も増えて価格も下がる。それにつれて、州が推進する必要性も低くなるという訳で、最低価格も年ごとに徐々に引き下げられる仕組みになっている。
 
2011年半ばの時点ではSREC の相場は570ドル程。田舎の空き地で太陽光発電所の建設が盛んになり始めた。ちょっとした家庭用パネルでも、年間数千ドルの収入になるし、出力1MW以上のミニ発電所になるとSREC はあっという間に積もり積もる。


 
SREC は土地や建物の所有者ではなく、パネルの所有者に発行されるので、電力を安く売る条件で家庭の屋根を借りてパネルを取り付ける会社も増え始めた。
 
問題が起きたのは2012年の秋。推進策が州政府の予想を大幅に上回る成功を納め、州内に設置されたパネルの合計出力は知事の2017年の目標であった250MWに早くも達しそうな勢いで伸び初めていた。それにつれ、市場に出回る債権数が激増。SREC の価格暴落が始まった。2013年の4月にはSREC ひとつあたり180ドルまで下落。ここまで下がると、州が設定した最低価格で売るのも不可能だ。
 
ローンを借りてパネルを設置した住民も、発電所の建設したディベロッパーも、SREC はひとつ500ドル前後で売れることを想定していた。あてにしていた収益が泡のように消え、借金の返済が伸びてしまったと嘆く人々。しかも、2013年半ばには、250MWどころか、「ここまで太陽光発電が増えたらSREC 制度を打ち切る」と州政府が宣言していた400MWに到達。まだ建設中の発電所はSREC をもらないのでは、というパニック感が業界に広まった。
 
また、先の見通しが立たないため、ディベロッパーは新たな太陽光発電所建築用に目を付けている土地があるにもかかわらず投資家に話を持っていけない状態に陥っている。
 
州は目標出力数を1,600MWまで引き上げたものの、現存していたSREC 制度は400MWで約束通り打ち切り。それをどう改善して次の政策に繋げるか未だに検討中だ。
 
州のエネルギー資源庁は、政策を調整することによって更に太陽光発電を増やせるはずと強気だ。しかし、他の州の例を見ると、クレジット政策を長期間うまく維持するのは容易ではないことがわかる。例えば、ニュージャージー州。2009年の8月に700ドルで売買されていたクレジットは、2011年の12月には225ドルまで暴落していた。ペンシルベニア州では2009年の11月に300ドルだったクレジットが、去年の5月にはたったの13ドル。
 
マサチューセッツ州では先月には235ドルまでより戻したが、それでも州の最低価格である285ドルを大幅に下回る。
 
アメリカで太陽光発電に絡んだ土地ころがしは聞かない。
 
しかし、政府の推進策には、バブルが何かしらの形でつきもの。再生可能エネルギーが市場で独り立ちできる日は、いつやって来るのだろうか。



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3 件のコメント:

  1. はじめまして。この記事を Twitter や Facebook で紹介するために、数十文字分引用したいと考えております。その written permission を頂くには、どちらに連絡すればよろしいでしょうか。

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    1. こちらこそ始めまして。ご紹介頂けるとのこと、ありがとうございます!
      数十字でしたら、貼られるコメントの中にブログへのリンクを含めて頂ければ、それで十分です。Twitter の場合には @bostonmind をつぶやきの中に入れて頂けると幸いです。
      どうぞ宜しくお願い致します。

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