2013年12月25日水曜日

ハリウッドがボストンへ進出!



ハリウッドの多極分散が進んでいる。
 
あそこにいないと映画を創れないというのは、もう一昔前の考え方。ジョージア州であろうが、カナダだろうが、今やプロダクションは経費が安くあがるならどこへでも行く。アメリカの映画を国外で撮って編集するケースも少なくないそうだ。
 
そんな中で、映画業界を税金優遇で惹きつけようとしているマサチューセッツ州。プロジェクトにある程度以上の投資をすると、費やしたお金の25パーセントが確定申告で戻ってくる仕組みだ。しかも、消費税も免除になる。右を向いても左を向いても資金欠乏に悩まされるプロダクション会社にとっては無視できない美味しい話し。近年ボストン内で映画やテレビのロケが頻繁に行われているのはこのためだ。マサチューセッツ州映画事務局ディレクターディレクターのリサ・ストラウト女史によると、台本ではニューヨークやペンシルベニアの設定になっている場面を、街並みの似たボストンの一角で撮りたいという問い合わせも良くあると言う。


この映画界でのボストン人気を形にしようと、私が住むローエル市出身の投資家らが最近集まり、ハリウッド顔負けの本格的な撮影スタジオを60億ドルもかけて郊外に建設した。プロダクションは屋外ロケだけでなく、屋内撮影をする場所や事務室を設けられるような「拠点」が必要だからだ。


名前は、ニューイングランド・スタジオ。ボストンから車で約一時間北西にあるフォート・デブンズの丘の上に立つ。スタジオは四つあり、面積はひとつあたり1,672平方メートル(505坪)。コンクリートの電動式移動間仕切りを開けると、四つのスタジオを連携してひとつの部屋としても使える。照明を設置するための通路つき梁出し天井は、床から何と13.7メートル。万弁なく光を照らして影をつくらないようにするには、これだけの高さが必要らしい。

 
スタジオ裏の廊下には洗練されたインテリアの衣装・化粧室と楽屋が並ぶ。上階はオフィス。だだっ広い場所に机と間仕切りを並べた部屋や、エクゼクティブ用の個室から見渡良いガラス張りでビデオカンファレンスの出来る会議室まである。建物は隅から隅まで超高速インターネットつき。電話機から照明器具までプロダクションに必要なものは全てある。しかも、衣装造りの別棟やカフェテリアまで整っていて、至れり尽くせりだ。


今までは必要なことを全て行える「拠点」的な場所が欠けていたマサチューセッツ州。屋内撮影は廃墟に近い状態の倉庫で行われることが多い。プロジェクト終了後は設定オフィスも解体し、元通りの状態にして返す。2000年公開の映画「パーフェクトストーム」の作成に加わったことでも知られる映画監督トッド・アーナウ氏は、彼らが過去に使った建物はあまりにも荒れ果てていて、撮影後取り壊しになったところも少なくはないという。アーナウ氏を始め、ボストン近郊をベースにして活動する映画プロは、ニューイングランド・スタジオ開設によってマサチューセッツ州が更に業界の注目の的となることを願っているようだ。


このスタジオは9月に開いたばかりで、まだ使用者はいない。現在映画は数本マサチューセッツ州で撮られているというが、既に撮影中のプロジェクトはあらかじめ調整済みで移動しにくいのかもしれない。「建てたは良いが、本当に利用者は来るのか」と固唾を飲んで見守っている人々も少なくはない。


一方、気早くもこのスタジオに使用者が殺到することを想定して立ち上げられているビジネスもある。映画業界を専門とする、俳優や撮影スタッフを賄うための移動レストランだ。先日ボストンで撮影中のHBOテレビ局ドラマのロケ先で、この移動レストランの取材をさせてもらった。シェフは永年有名な俳優・女優に料理を提供してきたベテラン。いろいろ面白い話を聞かせてもらった。
 
その話は、また後日紹介させてもらう。

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